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 100万人の妊婦が切腹するDVDが有名になって、ぼくはそれを血まなこになって探したが、見つけることはできなかった。今日ぼくは町にでると、多くの妊婦にであった、かの女らは似たような妊婦用のファッションに身をつつんで、膨れた肚を誇示して歩いている。われこそ、というようなその威勢は実際、赤ん坊という寄生虫に身体を蝕まれる哀れな姿にすぎず、同情的で、ぼくはその可愛そうな妊婦がどこに行くのか気になってあとをつけた。すると、かの女は人のとおりの多い道をさけて、細い道にゆくと薄汚いビルにはいった。テナントを表示したプレートを確認すれば、アダルトビデオのブランド名があり、こんなところに事務所があったのかとぼくを感心させた。
 消えた妊婦が、そのアダルトビデオの事務所に入ったと疑わずに、ビルに入り、事務所の前にいった。曇りガラスのはめられた汚れた扉は、かすかに開いていて、ぼくがそっと扉をおすと簡単にひらき、中にはいると仕事をしている何人かの男がいたが、ぼくに興味を示さなかった。スタジオと書かれたプレートのある扉をぼくは開くと、なかで妊婦が裸になっていた。
 はれた乳房、垂れ下がるほど膨れた肚、対照的にやせた手足の細さと毛深い陰毛。かの女はぼくの視線に恥ずかしがらず、だまってその場に正座すると、目の前におかれた三宝の、鎮座した匕首をつかむと、
「せっぷくう」
 と叫んで、肚を裂いた。
 臓器とともに、にんげんの形をした赤い胎児が床にこぼれおち、胎盤につながったままのそれは突然の外の空気に驚いて、泣きもせず、じたばたと弱々しく手足をうごかすと、ぴくりともしなくなる。血にまみれた赤ん坊を洗うかのように、妊婦だった女は失禁して、ぼくの足元にまでおしっこが飛んだ。
 乾いた喉で呼吸して、獣のような声をだして、後退り、だれかの身体に肩がぶつかった。ふり返ると、そこにはぼくと同じ顔をした男がいて、ぼくのことを見つめ、ぼくの股間を鷲づかみにした。きんたまをぎゅうと握られると、苦しく、くるしく、やがて――射精する。下着のよごれる感触の気持悪さよりも、同じ顔の人間の怖さにぼくは取って返して、汚いビルを逃げ出して、自分の家にもどった。
 狭い自分の部屋の、敷きっぱなしの布団のうえに妊婦が座り、やはり肚を裂いていた。きっとぼくは100万人の妊婦が切腹するのを見届けなければ、現実に帰れないのだ、とそれとなく直感した。
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sadistictorism

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 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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