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とかげ

 太陽が照りつける庭のあおい芝生のうえで少女が犬のように這いまわっている。かの女は目ざとく物干し台のちかくに隠れた蜥蜴を見つけだすと、飛びこんで、たたきつぶし、肚をさいて、痙攣している内蔵をおどりぐいにした。嚥下にあわせて喉がうごくたび、首枷から伸びる鎖がじゃらりじゃらり音をたてる。少女は一匹の蜥蜴の内臓では満足できず、つぎの蜥蜴をさがして目を皿のようにする。そのほそい顎をのばし、四つんばいで、しなやかな手足を緊張させる。少女が視界につぎの蜥蜴をとらえた瞬間、かの女をつないでいる鎖がひかれ、かの女は家のなかに引きずられていく。
 家のなかは足の踏み場がないほどゴミであふれていた。昔はきれいに飾られていたリビングには埃がつもり、中心に白骨化した死体がある。骨盤の形状から女とわかる。コンビニ弁当の空や、中身の半分のこったペットボトルであったり、干からびた野菜がある。腐臭のただよい、すべてがくすんだ色をしている屑物のなかで、白骨の白さだけが磨きぬかれた宝石のように美しい。少女は白骨死体のそばのソファに押しつけられると、服を脱がされて、乱暴に犯された。少女はとくにそれを苦痛とはおもわず、けれど楽しんでもいない、払うことのできない蚊に体中を刺されているようで、むずがゆさに気が狂いそうになるだけだった。紙くずのように少女は放擲されると、ソファのうえで身体を丸めたまま、白骨死体をじっと見つめる。死体のまわりには屑物がなく、扱いは少女よりも丁重にされていた。日に何度も磨かれて、垢や体液で汚れきったかの女よりも清潔だった。
 少女は呼吸がおさまるとゴミにうもれた服を拾いあつめてきて着こむ。寒いから着るのであって、身体を隠すためではない。ぼんやりと、少女は窓から差しこむ光が舞いあがった埃のかずかずを照らして、きらきらと輝くのをきれいとながめる。ゆらゆらと空気中を遊泳している光の粒を追っていくうち、空腹で全身の筋肉が強張ってくる。外にでて蜥蜴を食べようにも首からつながれた鎖の長さがたりず、外にでることは叶わない。
 じん、と音が胎内でする。内蔵のうごめく感覚、自分の意思と裏腹に内臓がひっくりかえる苦痛に少女は戸惑いながらも、慌ててソファから腰をおろして、なるべく白骨の死体から遠ざかる。以前に、ちかくで零したとき酷く殴られた記憶があった。少女はゴミのたかく積もっているところに腰をおしこんで、じっとした。逆流するような痛みは断続的で、しかし、痛みがないからといって安心はできない。じんわりと生温かい感触が自分の臀のあたりから広がっていくのを感じる。数日はここから動けない。動かされることもない。かの女は始まると構ってもらえず、放置され、ごみと一緒にされた。
 少女は頭痛に耐えているうちに寝入っていて、気づくと夜になっていた。腰のあたりが冷たく濡れていて、居心地がわるい。身じろごうと腰の位置をずらすと、白骨死体を愛しそうになでている姿が視界にはいる。
 少女は乱暴な感情が身内にわきあがるのを、そのとき始めて意識した。
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sadistictorism

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 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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