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ウサギと少女とジャム

 ああ、寒いなぁ、寒いなぁ、と手に息を吹きかけながら歩いていると、道の向こうからシルクハットに燕尾服をきた白ウサギがやって来て、私の手にいちごジャムを塗りたくった。まるで血みたいなそれに私が引いていると、白ウサギを追っていそうな金髪碧眼の幼女が、スカートをたくし上げて走ってきて、私の目の前で立ち止まった。大きな青い目がぎょろりと私の指を見つめる。少女はさっと口を開けて、
「ウサギをみなかった?」
 と質問するのかと思ったら、いきなり私の指をくわえた。大胆なこうどうに面くらっていると、少女の舌がちろちろと私の指をなめはじめた。私から見えない少女の口のなかで、指がなぶられている。指先、関節、爪のあいま。ひと通りなめあげると、指をはきだして、今度は私の手のひらについたジャムに舌をのばした。舐めとる、上向き加減になって、私の手首をしっかりと握りしめて。さいごに少女は私の親指を飴玉みたいに口に入れ、頬をすぼめた。きゅう、と名残惜しそうに親指を吸うと、ぽんっとした音をだして、私の指をはきだした。手にぬりたくられたジャムは綺麗になめとられていて、かわりに少女のよだれがべったりついていた。冷たい風に当てられ、指さきが凍える。
 寒い、と思った。そのときにはもう、少女の姿は消えていた。
 指先を鼻に近づけた、するとよだれの匂いが確かにして、少女もウサギも幻想ではない――そもそも、よだれの匂いがした、ということが私の気のせいじゃないなら、だけど。
 すっかり冬の、寒い風に落ち葉がまきあげられる道をひとり、背をまるめて家路を急ぐ。
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sadistictorism

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 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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