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忘れた町

 一度でいいから見てみたい、アリスのまんこ。
 そう歌いながら白ウサギのコスプレをした少年が、ママチャリに乗っていた。ある冬の日の午後のことである。
 轟町は、時代から忘れられた町だ。
 国鉄の駅からバスで揺られること2時間、それでやっと到着する。まだまだ蒸気機関が現役の町で、空気はススっぽく、町並みもどこかくすんでいる。石焼き芋の屋台が、町の中心にある広場に置いてあって、腰のまがった老人が店番のようなことをしている。
 ぼくは老人から焼き芋を買うと、ママチャリで剣呑なことをつぶやいた少年のあとを追った。彼はゆらゆらと酔っぱらいのようにふらふら自転車を漕いでいて、あのフレーズを飽きることなく繰り返している。
 アリスのまんこ、とは何か。
 ぼくはそれを彼に聞いてみたかった。
 少年に追いついたのは、彼が町外れの炭鉱の前にいき、そこでママチャリから下りたところで、少年はぼくに気づくと、さっと頬を赤く染めた。
「アリスのまんこってなに?」
「・・・」
 少年は片手で顔をおおうと、だまって、もう片方の手で、真横の店をゆびさした。看板があって、アニメ調のデフォルメされた女の子がM字開脚していた。その秘密の割れ目は栗色のちぢれた毛が、ちょび髭のように生えていて、両手の指で押しひろげられた下の唇のうちに暗い穴がある。その縦穴のような深遠にきをとられていると、ガチャリと物音がした。見れば、少年がママチャリにまたがり、全速力でぼくから遠ざかっていくところだった。
 ぼくは、そのお店にはいった。まだ昼間だったから、料金が安かったこともある。ともかく中にはいると、まずカビの臭がした。入り口のカウンターに若い男が立っていて、ぼくにうろんな視線をむけた。
「アリス」
 とぼくがいうと、彼は首を横にふった。ぼくは持っていた焼き芋を彼に渡した。すると、彼はため息をつきながら、ぼくに鍵をひとつ渡し、それから天井を指さした。それは、渡された鍵で開く部屋が2階にあるという意味なのだろう。
 2階にあがった。部屋は一つしかなかった。鍵が掛かっていた。持っていた鍵をつかうと簡単に開いた。中に入ると、店の表にあった看板のミニチュアがベッドのうえに置いてあって、人間の体を感知するセンサーがあるみたいで、ぼくが近づくと、しゅんしゅんと蒸気機関の音をだし、
「わたし、アリス」
 と幼女みたいな声をあげた。
「アリスのまんこを使ってね」
 蒸気圧で看板みたいなものに描かれたアリスがうごき、両足が昆虫じみた角度をつくる。それに引っ張られて、アリスの中心にあるまんこが押し広げられる。それは作り物かと思ったけれど、顔を近づけると、ちょっと酸っぱいような臭いがし、温度があって、ぼくの呼吸がかかるとヒクリ、ヒクリと痙攣した。裏に少女がいるのかもしれない。
 窓の外から、「一度は見てみたい、アリスのまんこ」という歌声が聞こえた。少年のものではない。若い男の張りのある声だった。窓に近づいて、閉じたカーテンの隙間から外をうかがうと、炭鉱での仕事を終えたガタイのいい男たちが連れ立って歩いているところだった。
 彼らの日当では、アリスを抱くことすらできないのだ。
 そう思うと、アニメ調のイラストで美化された知らない女のまんこが、なにやら高級品のようにみえてきた。
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使用者:sadistictorism
 
 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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