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ふたり




 キッチンの換気扇のところで、彼女は、たばこをくわえていた。
「こんな夜中に何してんの?」
「たばこ」
「そんなの見れば分かるよ」
 と私は眠たい目をこすりながら、いつのまにかベッドから消えたパートナーを見つめた。すらり、と、高い背に少年のような顔つき。薄暗がりで見ると、ほんとうに同性には見えない。そうであるほどに私は、どうして彼女と付合っているのかを見失う。むろん、好きで、恋して、愛しているからなのだが、その言葉に大きな意味はない。言葉は言葉で、実感がなければ、ただの音と記号に過ぎないわけで。
 そうこうしているうちに彼女はたばこを吸い終わり、換気扇を止めた。モータの音が消えると、しん、とした夜の静かさがうるさくなる。
 彼女に近づき、私は唇を重ねる。たばこの臭いがする、やわらかな唇のあいだを縫って、舌をいれると、彼女も答えるように舌を絡める。たばこの辛い味がした。舌のからみあう音が、ねちゃり、ねちゃり、と卑猥にひびいて、彼女の背にまわした手が、そろりと彼女の肌を探して、服の隙間から中に入っていく。きめの細かい肌の感触を手のひらに味わいながら、片手を彼女の下半身に伸ばしていく。すると、彼女は私から口をはなして、私の目を見つめた。透明な、色素がうすくて茶色に見える瞳孔が、じっとじっと、私を見ている。
 私は彼女から一歩はなれた。彼女はキッチンの流し台に手をのばし、そこに置いたままのたばこのボックスから一本とりだすと、躊躇なく口にくわえた。ふたたび換気扇のスイッチを押して、たばこに火をつけた。暗闇にぱったとついた小さなライターの火とたばこの先。じわり、と、浮かびあがる紫煙を彼女は見つめる。
「なんで、吸うのよ」
「きらいだっけ?」
「私は非喫煙者なんです」
「そうだね」といって、彼女はまだぜんぜん吸っていないたばこを灰皿に押しつけた。
 よろしい、と私はいった。なんというかキスした直後にたばこを吸われるのは、むかつくのだ。
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sadistictorism

使用者:sadistictorism
 
 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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