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西日

 
 たたみ、灰皿、ふとん。汗と煙草との臭いが染みてゐる、体液の生臭さが残留してゐる。彼は朝に帰つていつた。日曜日。根つからの商売人の彼には、意味のある曜日ではないが、世間は一斉に休みで、外泊しても咎められるやうな日ではない。
 寝不足の目をこすりながら、ゆつくりとふとんから出て、窓をあけた。冬の冷たい風がふきこみ、こもつた空気が入れかわる。
 これから湯を浴びて、買い物を済ましたら、店にでる時間だらう。日曜の夜は客足は少ないが、仕事であることには変わりがない。めんだうだ、と思ふ。このまま寝てゐたい、と思ふ。彼からもらうお金で、それで十分に生活はできる。それは生活ができるといふだけで、彼がゐなくなつたらご破算。さうなる前に貯められるだけ、貯めないといけない。鏡の前にいき、顔を映す。目元にかすかな隈がある。肌に水気がある。それが、化粧で隠さないといけないほどの隈になつてしまふまで、一夜の遊びで肌がかさついてしまふやうになるまで、さう時間はかからない。
 上京してまう二年。それまでのあいだに色んなことがあつた。かういふ生活は予想していなかつた。でもこの処、これで安定してしまつてゐる。夜はたらき、昼に眠る。
 ふとんを窓辺に干して、灰皿を洗ふ。それから銭湯にいき、その帰りにお酒や摘みになるやうなものを買つた。家に戻るとふとんをたたんで、服を着がえる。化粧をする。窓の外は明るい、太陽は低い位置にある。あと少しで夕方、あつといふまに夜。お酒の臭いが喉からせりあがり、鼻腔をさわる。幻のアルコールの感触に眉をひそめて、家をでた。
 店まではバスを使ふ。帰りはタクシーを使ふか、お客といつしよに待合か。今日はどちらだらうか、日曜日だからタクシーで帰るかもしれない。それとも歩いて戻るのもいいかもしれない。途方に暮れてゐたころのやうに、真夜中に歩くのも好いかもしれない。
 バス停は、ちようどバスが来たところで、私は途中から駆け足になつて、バスに飛びのつた。
 揺れながら走るバスの窓をながれていく景色は、昨日と何も変らない。
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sadistictorism

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 肥大化した自意識で糖尿病にかかっちまえ!

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